わたなべたすく
もうだいぶ前のことになるが、
この人の名前がなかなか出て来なかった。
嫁さんがどこぞに飲みに行くという日に
車で駅まで送って行った。
ラジオから流れてくるFM放送のパーソナリティ。
誰だっけ?
ほらほらヤクルトファンの
ときどきタモリ倶楽部に出たりする
眼鏡をかけてさ…
いつもはピンと来てくれる嫁さんが
心はもう一杯やっているのか反応が鈍い。
誰だっけ、誰だっけ。
顔はわかっているのに名前が出て来ない。
ほにゃららほにゃにゃ
って感じの名前。
「あ」からの探索が始まった。
ここら辺は几帳面で地道な性格が顔を見せる。
ああ、あい、あう、あえ…
なんか違う。
い…、う……か……た……
駅に着いた。
じゃぁね!
いそいそと、悩んでいる旦那に片手を上げて颯爽と消えて行った。
なあ、ない、なう…
懲りないというか粘り強いというか、
探索は続く。
家に帰り着きテレビを見ながら、
ま…、や…、
ら、はおらんだろ。
誰だっけ。
撮り溜めておいた時代劇でも見ようかなぁ。
とハードディスクのリストを眺める。
建物探訪…
わたなべ…たすく!
ピンポン。
やったー自力で思い出した。
シナプスが繋がった。
悩み始めて4時間くらいか。
この粘り他に使うことはできんか、なんかもったいない。
嫁にメール。
わたなべたすく
以上。
宴もたけなわなのか返事は来ず。
なんか思い出せた奇跡も色あせてくる。
で、わたなべたすくをなぜ思い出したかったのか。
なんか言いたかったのか…
手がかりがない。
「あ」から探索するわけにもいかず
真相は闇の中へ…
わたなべたすく、
お前、何やったんだ!